Fujisan's Kyareng

Monday, May 24, 2021

仏教とカーラチャクラの教えについて

 仏教とカーラチャクラの教えについて

 

カーラチャクラ尊、Mandala 

 誰もが知っている通り、あらゆる生き物は、小さな虫でも、幸せを願い苦しみを避けたいと思っています。本当の幸せを見つける道のりの中で、私たちは何度も苦しみに直面します。ブッダは、苦しみの原因についてよく考えることで、これを避け、根絶し、永遠の幸せである涅槃と悟りを得るように、と説かれました。

仏教の因果と相互依存の法則によれば、現在の私たちのありようは過去のカルマ(業)によるものであり、来世でどうなるかは今生で何をするかにかかっています。悪業と、迷妄から来る私たちの行いは、苦しみの原因となっています。ですから、私たちの迷妄を引き起こす無知や執着、奢り、怒り、嫉妬が、苦しみの主な原因なのです。

 ブッダは、この迷妄に打ち克ち、悟りという形で究極の平和を得る方法を説かれました。実践には、自己鍛錬、瞑想による集中、空を理解する智慧という、3つの高レベルの修練を積むことが含まれます。仏陀の教えは、大きくわけて小乗(ヒナヤーナ)と大乗(マハーヤーナ)という2つの乗り物から解釈し、実践し、理解することができます。

 小さな乗り物である小乗仏教は、上座部仏教(テーラワーダ)です。小乗の修行者は、迷妄を克服し、空の本質への洞察を得るために実践をし、自分自身が涅槃へ到達しようとします。

 大きな乗り物である大乗仏教は、さらに波羅蜜乗(パーラミターヤーナ)と金剛乗(ヴァジュラヤーナ)に分けられます。波羅蜜乗においては、修行者は小乗の実践に加え、菩提心を育み、一切衆生を救うために悟りを得ようとします。

 金剛乗、あるいはタントラ仏教は、仏教における密教です。スートラの実践に加え、タントラの実践をともないます。智慧によって深遠な空を理解する点は、波羅蜜乗も金剛乗も同じですが、その方法に違いがあります。金剛乗の方法では、自身を本尊の形ある身体(色身)と同様の側面を持つと観想する、本尊ヨーガの実践を含みます。この実践は所作、行、ヨーガ、無上ヨーガの4つに分類されます。

 カーラチャクラの教えは最高レベルのヨーガタントラである無上ヨーガに属し、カーラチャクラ尊ヴィシュヴァマータを観想します。ブッダはカーラチャクラタントラの教えを、神秘の国シャンバラの初代王(カルキ)スチャンドラの要請によって、南インドのシュリー・ダーニャカタカで説かれました。その教えはシャンバラで興隆し、インドへ戻り、10世紀頃、チベットだけに伝わりました。ド・ロツァワやプトゥン・リンチェン・ドゥプの時代からツォンカパの時代まで、カーラチャクラ灌頂は、チベット人導師から次の導師へと受け継がれ、今日、ダライ・ラマ法王はその後継者として、私たちに教えを授けてくださいます。

 タントラは通常、少数の熟練した修行者にだけ伝えられる神聖な秘密の教えです。カーラチャクラの教えは最高のヨーガタントラの一つですが、あらゆる精神レベルの一般大衆に授けられます。ダライ・ラマ法王はこうおっしゃいます。

 「確かに、参加者のすべてが、灌頂の完全な恩恵を受けるのに十分な内面的基礎ができているわけではありません。しかし、積極的に参加すれば誰でも、良いカルマを積む心を作り、強めることができるはずです。」

 カーラチャクラに参加し、教えを受けることの功徳は、精神的理解力と動機のレベルに応じて個人差があるといわれています。熟練した修行者にとっては、タントラを実践するための完全なイニシエーションを受けるチャンスとなります。実践を良く理解している者には、理解を再確認し、活性化させる良い機会となります。教えについてよく知らない人には、教えを受け、実践するというカルマの種を与えます。

 いずれの場合も、教えを受けるための最も重要な条件は、一切衆生の役に立とうとする、参加者の利他的な動機です。ですから、教えを受ける動機の背景は、とても純粋で高潔なものでなければなりません。世界平和のために重要なことは、純粋に利他的な動機に駆り立てられた群衆から生まれる力と祝福が影響を与え、戦争や暴力のない平和な世界をつくる力や環境を生むということです。

 カーラチャクラの講義に参加することで、参加者は神秘の国シャンバラに生まれ変わって教えの実践を続けられるよう、祈り、カルマの種をまくことにもなります。

 作文:ツェワン・ギャルポ・アリヤ。和訳:熊谷惠雲

-------------------------------------------

 カーラチャクラ曼荼羅:カーラチャクラの教えは最高(密教)レベルのヨーガタントラである無上ヨーガに属し、カーラチャクラ尊ヴィシュヴァマータとその曼荼羅を観想します。真ん中はカーラチャクラ尊(ヤブ・ユム)と仏の宮殿です。上左からの本尊は:カーラチャクラ尊、ヤマンタカ、持金剛仏、チャクラサムバラ、グヒヤサマージャ。下の左から:チョーギャル、ナムセ、リグデン・ギャルポ。ブッダはカーラチャクラタントラの教えを、神秘の国シャンバラの初代王(カルキ)スチャンドラの要請によって、南インドのシュリー・ダーニャカタカで説かれました。その教えはシャンバラで興隆し、インドへ戻り、10世紀頃、チベットだけに伝わりました。ド・ロツァワやプトゥン・リンチェン・ドゥプの時代からツォンカパの時代まで、カーラチャクラ灌頂は、チベット人導師から次の導師へと受け継がれ、今日、ダライ・ラマ法王はその後継者として、私たちに教えを授けてくださいます。

 

No comments:

Post a Comment